睡眠時無呼吸症候群と歯科の関係! スリープデンティストリー
- 2025年10月19日
- 未分類
みなさん、こんにちは! 歯のケアはしていますか?
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)は、睡眠中に呼吸が断続的に止まる疾患で、生活習慣病や心血管疾患のリスクを高めることが知られています。近年、「スリープデンティストリー(睡眠歯科)」という分野が確立されつつあります。
今回は、睡眠時無呼吸症候群についてと、歯科的アプローチによる治療法について詳しく解説します。
睡眠時無呼吸症候群とは?
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に10秒以上の呼吸停止(無呼吸)や、著しい換気低下(低呼吸)が繰り返される病態です。主に以下の2つのタイプに分類されます。
・ 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA):上気道の閉塞によって起こる。肥満や顎の形態異常が原因
・中枢性睡眠時無呼吸(CSA):脳の呼吸中枢の異常によって呼吸指令が出なくなる
このうち、歯科が関与できるのは主にOSAです。
歯科が関与する理由
OSAの多くは、睡眠中に舌根や軟口蓋が気道を塞ぐことで発症します。歯科では、これらの気道閉塞を物理的に防ぐために「口腔内装置(OA:Oral Appliance)」を用いた治療が行われます。
口腔内装置(スリープスプリント)とは?
・下顎を前方に誘導するマウスピース型装置
・睡眠中の気道閉塞を防ぎ、いびきや無呼吸を軽減
・CPAP(持続陽圧呼吸療法)に比べて装着が簡便で携帯性に優れる
歯科医院での治療の流れ
1.医科との連携による診断
・睡眠外来や耳鼻科でのポリソムノグラフィー(PSG)検査が必要
・ 歯科単独では診断不可のため、医科との連携が必須
2.適応の確認
・軽度〜中等度のOSAが主な適応
・重度の場合はCPAPが第一選択となるが、併用や代替としてOAが用いられることも
3. 装置の作製と調整
・歯列・咬合の精密印象採得
・顎関節や咬合状態を考慮した設計
・装着後のフィッティングと経過観察
4. 定期的なモニタリング
・効果判定のための再PSG
・顎関節症や咬合変化のチェック
エビデンスと臨床効果
・OAは軽度〜中等度OSAにおいて、AHI(無呼吸低呼吸指数)を平均50%以上改善するという報告が多数
・CPAPと比較して治療継続率が高い(快適性・携帯性の面で優れる)
・長期使用により咬合変化や顎関節症のリスクがあるため、歯科的フォローが不可欠
最新の研究と今後の展望
・3DスキャナーやCAD/CAM技術を用いたOAの個別設計が進行中
・AIによる睡眠データ解析とOA効果予測の研究
・小児のOSAに対する歯科矯正的アプローチ(口腔機能発達不全症との関連)
睡眠時無呼吸症候群は、全身の健康に深く関わる疾患です。歯科はその治療において重要な役割を担っていて、特にOA療法は、患者のQOLを高める有効な手段として注目されています。
スリープデンティストリーは、今後ますます発展が期待される分野です。歯科医療従事者として、医科との連携を強化し、患者の睡眠と健康を支える体制づくりが求められています。
町の歯科医師が関与できるSAS
私たち町の歯科医師がSASに関与できる最大の理由は、「口腔内装置(OA:Oral Appliance)」による治療が可能だからです。これは、睡眠中に下顎を前方に誘導するマウスピース型の装置で、気道の閉塞を防ぎ、いびきや無呼吸を軽減します。
CPAP(持続陽圧呼吸療法)に比べて装着が簡便で、旅行や出張時にも携帯しやすいため、軽度〜中等度のOSA患者にとっては非常に有効な選択肢となります。
地域歯科での実際の対応
当院では、以下のような流れでSASの患者さんに対応しています。
1. 医科との連携
まず大前提として、SASの診断は歯科単独ではできません。睡眠外来や耳鼻咽喉科などでのポリソムノグラフィー(PSG)検査が必要です。私たちは地域の内科・耳鼻科と連携し、診断後に紹介を受けてOA治療を行います。
2. 適応の見極め
OAはすべてのSAS患者に適しているわけではありません。重度のOSAや、顎関節症のある方、歯の本数が少ない方には適応外となることもあります。咬合状態や顎の可動域を評価し、適応の可否を慎重に判断します。
3. OAの製作と装着
印象採得後、患者さんの顎位に合わせたOAを製作します。装着時には、違和感や顎関節への負担がないかを確認し、必要に応じて微調整を行います。
4. フォローアップ
長期使用により咬合変化や顎関節症が生じることがあるため、定期的な歯科的フォローが不可欠です。
地域医療における課題と可能性
私たち町の歯科医院がSASに関与するうえで、いくつかの課題もあります。しかし一方で、地域歯科だからこそできることもあります。たとえば、定期検診での問診時に「いびき」「日中の眠気」「起床時の頭痛」などの症状を聞き取ることで、SASの可能性に気づくことができます。実際、当院でも「家族さんにいびきを指摘されて」という相談からSASが判明したケースが複数あります。
「いびきくらい大したことない」と思っていませんか?実はそれが、命に関わる疾患のサインかもしれません。もしご自身やご家族に、以下のような症状がある場合は、一度検査をおすすめします。
・睡眠中のいびきや呼吸停止
・日中の強い眠気や集中力の低下
・起床時の頭痛や口の乾き
・高血圧や糖尿病の既往がある
そして、医科でSASと診断された場合は、ぜひ歯科でのOA治療についてもご相談ください。私たち地域の歯科医師は、睡眠の質を改善し、患者さんの生活の質を高めるお手伝いができます。
睡眠時無呼吸症候群は、全身の健康に深く関わる疾患です。町の歯科医院として、私たちは「口から始まる全身の健康」を支える存在でありたいと考えています。これからも、地域の皆さまの健康を守るために、医科との連携を強化し、睡眠医療にも積極的に取り組んでまいります。
睡眠時無呼吸症候群についてなにか不安なことなどありましたら、つくしの歯科医院にお気軽にご相談ください。